理事長挨拶

熊本リハビリテーション病院
サルコペニア・低栄養研究センター
代表理事 吉村 芳弘
このたび、2025年12月の理事会において一般社団法人日本リハビリテーション栄養学会の理事長を拝命いたしました、吉村芳弘です。日頃より学会活動を支えてくださる会員の皆さま、関係団体・企業の皆さまに心より御礼申し上げます。
本学会は、医師、管理栄養士、歯科医師・歯科衛生士、看護師、薬剤師、そして理学療法士・作業療法士・言語聴覚士をはじめとするリハビリテーション専門職など、多職種が同じ目標のもとに集い、臨床の課題を「科学」と「実装」で解決していける場です。私はこの強みを最大化し、現場に届く成果を生み出す“実践と研究の架け橋”として学会をさらに前進させてまいります。
超高齢社会の進行により、低栄養のみならず肥満、サルコペニア肥満、フレイル、嚥下障害など、多様で重なり合う課題への対応が求められています。機能を回復させるだけではなく、「食べる力」「動ける力」「暮らせる力」を守り、活動・参加へつなげる統合的支援が不可欠です。医療・介護の制度も、リハビリテーション、栄養、口腔の連携を急性期から生活期まで一貫して推進する方向へ進んでいます。いまこそ、私たちの専門性を束ね、質の高い標準モデルとして社会に提示する時期に来ています。
新体制で私が目指す方針は、次の4点です。
第一に、科学的根拠に基づく三位一体(リハ・栄養・口腔)の標準実装です。評価・計画・介入・アウトカムを結ぶ共通言語と手順を整備し、施設規模や地域差に左右されず再現できる形にします。
第二に、グローバル・プレゼンスの確立です。国際的な概念や指標と整合する研究・教育を推進し、国内の優れた実践を英語で発信し、国際学会やガイドライン形成にも参画します。
第三に、人材育成の深化です。多職種が互いの専門性を理解し、患者・家族と対話しながら意思決定を支える力を育む教育体系を強化します。次世代の研究者・実践者が挑戦できる環境も整えます。
第四に、社会・政策との対話です。現場の成果と課題をデータで示し、医療・介護の質向上に資する提言を行い、地域包括ケアの中で三位一体が当たり前に機能する社会を目指します。
会員一人ひとりの実践が学会の力です。皆さまとともに、「食べられる」「動ける」「暮らせる」を当たり前にする未来を創っていきたいと思います。今後ともご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
2026年1月
日本リハビリテーション栄養学会
理事長 吉村 芳弘
設立趣旨
今回、日本リハビリテーション栄養研究会を日本リハビリテーション栄養学会としました。2011年に日本リハビリテーション栄養研究会を設立してからの6年間で、リハ栄養という言葉はリハ領域や栄養領域である程度、浸透したと思います。日本リハビリテーション栄養研究会の会員は5400人を超え、リハ領域や栄養領域の学術集会でもリハ栄養関連の演題数が増加してきました。リハ栄養用の栄養剤も数種類、販売されています。「栄養ケアなくしてリハなし」「栄養はリハのバイタルサイン」というコンセプトにより、リハと栄養の距離は近づいたと考えます。
最近、リハ栄養の理論的研究を行い、リハ栄養の新しい定義と、質の高いリハ栄養を実践するためのリハ栄養ケアプロセスを開発しました。リハ栄養とは、ICF(国際生活機能分類)による全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価、診断、ゴール設定を行ったうえで、障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレイルを改善し、機能・活動・参加、QOLを最大限高める「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」です。
リハ栄養ケアプロセスとは、障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレイルに関連する問題に対して、質の高いリハ栄養ケアを行うための体系的な問題解決手法で、5つのステップで構成されます。
①リハ栄養アセスメント・診断推論:ICFによる全人的評価、栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の評価・推論を行う
②リハ栄養診断:栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足を診断する
③リハ栄養ゴール設定:仮説思考でリハや栄養管理のSMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:切実・重要、Time-bound:期限が明確)なゴールを設定する
④リハ栄養介入:「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」を計画・実施する
⑤リハ栄養モニタリング:リハ栄養の視点で栄養状態やICF、QOLを評価する
しかし、リハ栄養の臨床研究、診療ガイドライン作成、教育、臨床実践は、まだまだこれからです。現在、リハ栄養診療ガイドラインを作成中ですが、リハ栄養領域の質の高いエビデンスが少ないことは明らかです。リハや栄養の関連職種における卒前教育、卒後教育、生涯学習で、リハ栄養を学ぶ機会は少ないのが現状です。そこでリハ栄養の質、量ともに飛躍的に充実させるために、日本リハビリテーション栄養学会を設立しました。
本学会は、リハ栄養全般に関する会員相互及び内外の関連学術団体との研究連絡、知識の交換、提携の場となることを通して、リハ栄養学の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と医学及び医療の向上に資することで障害者や高齢者の機能、活動、参加、QOLの向上に寄与することを目的としています。多くの方に日本リハビリテーション栄養学会に入会していただけると、とても心強く思います。何卒よろしくお願い申し上げます。
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