ご挨拶・設立趣旨

理事長挨拶

公益財団法人
宮城厚生協会 坂総合病院
リハビリテーション科

代表理事 藤原 大

 この度、日本リハビリテーション栄養学会理事長を拝命しました、公益財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院 リハビリテーション科の藤原大です。リハビリテーション栄養に関する集団的な取り組みは、2011年12月に開催された第1回日本リハビリテーション栄養研究会から始まりました。2017年には法人化により「一般社団法人 日本リハビリテーション栄養学会」となりました。「リハなくして栄養ケアなし、栄養ケアなくしてリハなし」「栄養はリハのバイタルサイン」を合言葉として、様々な実践や学術研究が盛んに行われてきました。この10年は、リハビリテーション栄養の概念を構築して、世の中に広めるための礎を築くための貴重な時間でした。次の10年、リハビリテーション栄養と私たちはどこに向かうのでしょうか?

 私が今後の取組みの中で重要視するのは、「対話」と「変容」です。臨床現場では、リハビリテーション栄養の対象となる障害者やフレイル高齢者およびその家族との「対話」があります。「対話」を通して、本当に求められている治療やケアは何かを思考し実践することで、対象者の意識・行動や人生の「変容」を図ります。また臨床現場では、多職種での「対話」もあります。「対話」を通して、各職種の専門性をうまく融合することで、より質の高いリハビリテーション栄養チームアプローチへの「変容」を実現します。私たち専門職種には、自分との「対話」も必要です。リハビリテーション栄養の取組を通して、自分自身と向き合い省察することで、各人が自分らしい「変容」を遂げることを支援します。そして、学会としては社会との「対話」を進めていくことが求められます。フレイル・サルコペニア・栄養障害・口腔機能障害の背景には、必ず「健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health:SDH)」が存在しているはずです。個々の対象者への対応に留まらず、必要に応じて、社会の動きや制度を「変容」することにも積極的に取組みます。

本学会は、リハビリテーション栄養学の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と医学及び医療の向上に資することで障害者や高齢者の機能・活動・参加、QOLの向上に寄与することを目的としています。これは学会設立当初と変わりはありません。より幅広い多くの皆さんと手を取り合い、ひとつひとつの活動に丁寧に取組みながら、次の10年を歩んでいけることを心より願っています。どうぞよろしくお願いいたします。

2022年1月30日

日本リハビリテーション栄養学会
理事長 藤原 大

設立趣旨

今回、日本リハビリテーション栄養研究会を日本リハビリテーション栄養学会としました。2011年に日本リハビリテーション栄養研究会を設立してからの6年間で、リハ栄養という言葉はリハ領域や栄養領域である程度、浸透したと思います。日本リハビリテーション栄養研究会の会員は5400人を超え、リハ領域や栄養領域の学術集会でもリハ栄養関連の演題数が増加してきました。リハ栄養用の栄養剤も数種類、販売されています。「栄養ケアなくしてリハなし」「栄養はリハのバイタルサイン」というコンセプトにより、リハと栄養の距離は近づいたと考えます。

最近、リハ栄養の理論的研究を行い、リハ栄養の新しい定義と、質の高いリハ栄養を実践するためのリハ栄養ケアプロセスを開発しました。リハ栄養とは、ICF(国際生活機能分類)による全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価、診断、ゴール設定を行ったうえで、障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレイルを改善し、機能・活動・参加、QOLを最大限高める「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」です。

リハ栄養ケアプロセスとは、障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレイルに関連する問題に対して、質の高いリハ栄養ケアを行うための体系的な問題解決手法で、5つのステップで構成されます。

①リハ栄養アセスメント・診断推論:ICFによる全人的評価、栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の評価・推論を行う

②リハ栄養診断:栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足を診断する

③リハ栄養ゴール設定:仮説思考でリハや栄養管理のSMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:切実・重要、Time-bound:期限が明確)なゴールを設定する

④リハ栄養介入:「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」を計画・実施する

⑤リハ栄養モニタリング:リハ栄養の視点で栄養状態やICF、QOLを評価する

しかし、リハ栄養の臨床研究、診療ガイドライン作成、教育、臨床実践は、まだまだこれからです。現在、リハ栄養診療ガイドラインを作成中ですが、リハ栄養領域の質の高いエビデンスが少ないことは明らかです。リハや栄養の関連職種における卒前教育、卒後教育、生涯学習で、リハ栄養を学ぶ機会は少ないのが現状です。そこでリハ栄養の質、量ともに飛躍的に充実させるために、日本リハビリテーション栄養学会を設立しました。

本学会は、リハ栄養全般に関する会員相互及び内外の関連学術団体との研究連絡、知識の交換、提携の場となることを通して、リハ栄養学の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と医学及び医療の向上に資することで障害者や高齢者の機能、活動、参加、QOLの向上に寄与することを目的としています。多くの方に日本リハビリテーション栄養学会に入会していただけると、とても心強く思います。何卒よろしくお願い申し上げます。

TOP